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東京・清澄白河。古い水路の跡に沿って歩くと、倉庫を改装したカフェや、小さなギャラリーがぽつぽつと現れる。
僕はその街で、奇妙な手紙を受け取った。
差出人は、十年前に別れた恋人だった。
「土曜日の夕方、橋の上で待っています」
それだけだった。
約束の日、僕は水路沿いの道を歩いた。川面には夕陽が揺れ、向こう岸の窓に灯りがともり始めていた。
橋の上に、彼女がいた。
「久しぶり」
彼女は少しも変わっていないように見えた。けれど、手にしている古いカメラだけが、あの頃とは違っていた。
「この街、ずいぶん変わったね」
彼女は水面を眺めた。
「でも、水は昔から同じ方向へ流れている」
僕らは橋を渡り、川沿いの小さな喫茶店に入った。彼女はパリで暮らしていたこと、今は東京に戻って写真を撮っていることを話した。
窓の外、水路は街の奥へと続いていた。
「ねえ、今度、あの先まで歩かない?」
彼女が言った。
僕はうなずいた。
夕暮れの水面に、二人の影が並んで映っていた。街と街、人と人。離れていた時間さえ、水の流れがそっとつないでくれるようだった。
東京のマジカルアワーは、静かな水路の上から始まった。
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